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独自にテストしている陶芸の釉薬に関するデータを投稿

天目釉薬のテストに向けて

序文

  釉薬を研究する上で鉄の変化を観察するのはどこかでやっていきたいと思っていたりはしたのですが、なかなか普段の制作に気をとられてしまい、釉薬を主眼に制作をすることができていませんでした。陶芸作品を売って生計を立てることが現実的には上手くいかないと感じ、最後の陶芸として"曜変天目"を出したら納得するかなと思い天目釉のテストを始めました。とりあえず、「陶芸といったら"曜変天目"でしょー」というイメージがあるので陶芸のことを知らない姉にその話をしたら、全然興味ない表情でした。。と前置きはこの辺で実際に、どういった手順でテストをしていったかを書きます。

 曜変天目というキーワードが出たので、そちらの概要をまとめた記事に関しては別で書いておこうと思います。

 

テストでやっていくこと

①ゼーゲル式

 0.3KNaO•0.7CaO•xAl2O3•ySiO2 のあたりが基本的な1240°Cあたりで溶融する温度の釉薬の成分であるのでここを基本に数値を変化するのが今後のテストの課題となっていきます。アルカリの変化は

  0.3 KNaO • 0.7 CaO、  0.4 KNaO • 0.6 CaO、  0.5 KNaO • 0.5 CaO

また、溶剤のCaO、MgOの割合を変動させて鉄釉がどのような表情になるかを見ていききたい。

②着色金属

  色の着いた釉薬であるので外割の着色金属の割合がどの辺りなのかを見つけるのも課題となってきます。一般的に弁柄(FeO2成分が98%の物質) 5%~10%あたりで黒系の釉薬が出来るようです。参考資料によっては 6% ~ 10% がポピュラーですが、他の値も今後検討していきます。また、二酸化マンガン、酸化コバルト、鉄系顔料でも、黒浜、四酸化鉄を利用して、弁柄以外の変化をテストしていきます。

焼成

  焼成については原料の選定をある程度決めてから追求していきます。テスト段階において偶然的に発生した表情を再度実現したり、酸化、還元、中性、炭化との差、徐冷での差、二度焼きによる鉄の変化を観察していきたい。

 

 

 さらっと書いたもののそれぞれを実現するには時間がかかるでしょう。消去法的に鉄釉の変化を極めていくので最終目標の曜変天目にたどりつくのはいつになることやら、、、

 

 

陶芸の釉薬研究について

序文

 陶芸を始めたのが、高校生のときなので足掛け15年以上の陶芸及び美術に接しながら過ごしてきました。最初は出来合いの釉薬をかけて作品をつくっていましたが、大学に入って陶芸の根本を学習していく中で、原料から釉薬をつくることに興味を持ち始めました。最初はゼーゲル式など気にせず、三成分(3つの原料)の比から釉薬の表情を観察したり、原料そのものを焼いた表情を見て単純な釉薬作りをテストしていました。

 最初に興味を持ったのは鮫肌釉という鹿児島の龍門司窯でつくられたものでした。陶芸の本にモノクロで掲載していたものでそれのヒントになる原料も記載されていたのですが、なかなかに上手くいかず安定した表情が作れるようになったのはそれから3年ほど過ぎたあたりでした。原料の取扱のちょっとした差異や焼成温度の引っ張り方、テストピース自体の大きさでかなり釉薬の見え方は変化したものです。作品を作る上では土、釉薬、焼きの三要素にコンセプトを求めますが、未だしっくりとした表情は見つけられていません。昔はその土地土地で決められた原料を基に陶芸は作られていたのですが、現代の陶芸は全国の原料が自由に手に入り、海外から輸入することも選択できるようになりました。天然資源のため枯渇するものもありますが、新たに人工的に生成できるようになった素材もあるので、そういう意味では陶芸の素材の進化がこれからも続いていくように感じます。

 この陶芸ブログは個人的にテストしてきた釉薬のピースを紹介することをメインに始めようと思います。それらの記事が閲覧していただいた皆様に役に立つと嬉しいです。