石灰系天目釉薬(0.5KNaO)
アルカリの増加に伴うアルミナ、シリカの範囲
前回に引き続き、アルカリの操作を実施。KNaOを0.5にすることで、さらに融点が低くなるテストです。原料として長石を利用しているので、長石でアルカリ分を確保すると自然とアルミナとシリカの最低値は高くなる。
これまでテストしてきた石灰系天目釉もKNaO分が増えていくことでアルミナ、シリカの範囲が多少ずれて増えている。
0.3 KNaOの場合、Al2O3は 0.35 ~ 0.65, SiO2は 2.5 ~ 5.5
0.4 KNaOの場合、Al2O3は 0.45 ~ 0.75, SiO2は 3.5 ~ 6.5
0.5 KNaOの場合、Al2O3は 0.55 ~ 0.85, SiO2は 4.5 ~ 7.5
アルミナ、シリカが同じ範囲であった方が良さそうですが、そうなるとフリットを使用することになるので、違う原料を使うという要素の方が再現性を失う恐れがあります。また、アルカリ分が増えると融点が下がるのでアルミナ、シリカが増えた耐火性の高い範囲で試験した方が都合がいいのでは。
テスト
①ゼーゲル式
0.5KNaO•0.5CaO•xAl2O3•ySiO の Al2O3とSiO2の範囲を設定
x => 0.55 ~ 0.85, y => 4.5 ~ 7.5 の範囲で行う
縦、横を5列、25枚で
x は 0.55, 0.625, 0.7, 0.775, 0.85、y は 4.5, 5.25, 6.0, 6.75, 7.5
② 調合
①の式に則って、実際に使う原料を調合していく。
一般的な原料を元に、
アルカリの摂取には福島長石、CaOには鼠石灰、
Al2O3には河東カオリン、または酸化アルミナ、
SiO2には福島珪石
着色顔料は弁柄、今回は外割で10%を添加
結果
OF SK8 接地 1225°C 1h30m keep
0.85 | |||||
---|---|---|---|---|---|
0.775 | |||||
0.70 | |||||
0.625 | |||||
0.55 | |||||
4.50 | 5.25 | 6.00 | 6.75 | 7.50 |
RF SK8 接地 1225°C 1h30m keep
0.85 | |||||
---|---|---|---|---|---|
0.775 | |||||
0.70 | |||||
0.625 | |||||
0.55 | |||||
4.50 | 5.25 | 6.00 | 6.75 | 7.50 |
感想
0.4KNaOのテストと同様に酸化ではシリカ、アルミナが増える傾向において、酸性ガスのブクが発生している。安定した光沢天目釉になっている(立体的なブクの発生がない)というと0.7Al2O3•4.5SiO2と0.55Al2O3•6.0SiO2を結ぶ線の左下側からである。ちなみに0.4KNaOの時は、0.675Al2O3•3.5SiO2と0.45Al2O3•6.5SiO2を結ぶ線の左下側からこの安定した範囲が見られる。つまり、アルカリが0.1変化するとAl2O3•SiO2ともに0.1•1程度の差でその範囲が変わる。
還元はやはり、ブクの発生はほとんどない。珪酸質マットの範囲はここでは見られなかった。シリカが多い値をもう一つ取れればそれもあったかもしれない。
石灰系天目のアルカリ操作はこの辺で終わります。