石灰系天目釉薬(0.4KNaO)
アルカリの操作について
アルカリとは原子の周期表で1族にある元素のことです。陶芸で使う原料でアルカリを含むものは多々あります。基本の原料として長石を選ぶのはシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)を主成分で含みつつ、少量のアルカリ分(K2OやNa2O)を含むのでそのバランスがちょうど1200°C代で釉薬となるからです。その他にも松灰や土灰がそのような基本の原料にはなるのですが。
アルカリの量を増やすということは単純に融点がさがるということです。上絵などで800°C程度で溶ける釉薬というのはアルカリ分が多いからです。長石が含むアルカリ量(長石は他にもSiO2やAl2O3を含むため)では800°Cで溶かすことはできません、そのため、溶剤として高温釉の場合は石灰やタルクで調整していたのですが、バリウムやストロンチウム、亜鉛華、もっと低温を狙うなら、鉛を利用したり。まぁ、最近は無鉛が当たり前なので、無鉛フリット(常温でアルカリの純物質を扱うためのガラスに溶かしこんだもの)を使います。
以前0.3KNaOでアルカリを調整したテストを投稿しました。
epidemic-glazes.hatenablog.com
アルカリとアルカリ土類(ここではCaO,MgO)は足すと常に1にしてアルミナ、シリカの量を変動させるのが釉性状をみる一般的なテストです。0.3KNaOでアルカリ土類同士の比を変動させるテストを行いましたが、今回は石灰系しばりでアルカリの方の量を変動させてどう変わるかを見ていこうと思います。
テスト
①ゼーゲル式
0.4KNaO•0.6CaO•xAl2O3•ySiO の Al2O3とSiO2の範囲を設定
x => 0.45 ~ 0.75, y => 3.5 ~ 6.5 の範囲で行う
縦、横を5列、25枚で
x は 0.45, 0.525, 0.6, 0.675, 0.75、y は 3.5, 4.25, 5.0, 5.75, 6.5
② 調合
①の式に則って、実際に使う原料を調合していく。
一般的な原料を元に、
アルカリの摂取には福島長石、CaOには鼠石灰、
Al2O3には河東カオリン、または酸化アルミナ、
SiO2には福島珪石
着色顔料は弁柄、今回は外割で10%を添加
結果
OF SK8 接地 1225°C 1h30m keep
0.75 | |||||
---|---|---|---|---|---|
0.675 | |||||
0.60 | |||||
0.525 | |||||
0.45 | |||||
3.50 | 4.25 | 5.00 | 5.75 | 6.50 |
RF SK8 接地 1225°C 1h30m keep
0.75 | |||||
---|---|---|---|---|---|
0.675 | |||||
0.60 | |||||
0.525 | |||||
0.45 | |||||
3.50 | 4.25 | 5.00 | 5.75 | 6.50 |
感想
酸化ではシリカ、アルミナが増える傾向において、酸性ガスのブクが発生している。どちらかといえば、シリカが増えることでブクの様相がみられる。左下(Al2O3、SiO2の共に少ない)にいくにつれ、安定した光沢天目釉になっている。やはり還元では鉄の赤い結晶が見られる。
アルカリの多い釉薬ではガスのグツグツがよくでる傾向であることがわかった。またシリカやアルミナの多い釉薬は1200°C代では粘性を持っているため、さらに高温で焼成するとどうなるかということも観察してもいいのでは。。
次回は0.5KNaOでのテストをしていきます!!